南知多を変えた3人のヒーローを紹介!縦割り行政で感じたリアルな苦悩
「南知多町が南知多町とし生き残るためにはどうすればいいのか?」
その答えを求めて立ち上がった結果、まだ課題は残るものの、組織改革を進めることができた南知多町。やるべきことを自分たちの力で考えて、実行できるようになった。
ここで、これまで南知多が行った一連のプロジェクトについて、もう一度振り返っておこう。
組織が得た成果は大きかったが、望むような結果は得られなかったトップダウン型プロジェクト。
グッジョブ運動が大成功により次代のリーダーが成長したボトムアップ型プロジェクト。
町長の町としての経営方針が明確になり新設組織に結実した首長戦略アドバイザー。
全体の流れを通して成された町長と職員の信頼関係の強化。
一連のプロジェクトを通して、南知多町は自分たちで考えて行動できる組織に生まれ変わりつつある。だからこそ、南知多町が南知多町として生き残るための行動を取れるようになったのだが、ここに至るまで職員たちはどのようなことを感じ、またどのような未来を見つめているのだろうか?
全庁あげてのプロジェクトで、全ての職員が何らかの形で携わっていることは間違いないのだが、本記事では特に深く関わった人物の中から、3人の職員のインタビューをご紹介する。
一連のプロジェクトでの苦労ややりがい、南知多町の職場の現状やこれからの南知多町について、本音で語ってもらおう。
南知多町に住む人はもちろん、地方課題を多く抱える自治体の方や組織改革に悩む方、これから行政で働きたいと思っている方は、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
1.グッジョブ運動で良案を提案!岡崎さんのインタビュー
まずご紹介するのは、ボトムアップ型プロジェクトで活躍した岡崎さんだ。グッジョブ運動で提案した「年度任用職員レンタル制度」が評価され、グッジョブ大賞を受賞した。
今回は育児休暇中にも関わらず、インタビューに答えてくれた。
メンバークラスである岡崎さんは、南知多町の一連のプロジェクトをどうみていたのか?南知多町の職場についてどう感じているのか?これから必要だと思う人材は?本音をお届けする。
インタビュアー:「育児休暇中にも関わらず、お時間をいただきありがとうございます。以前の記事ではボトムアップ型プロジェクトについてお話をお聞かせいただきましたが、今回はプロジェクト全体と南知多町役場全体のお話を聞かせていただければと思います。」
岡崎さん:「はい。よろしくお願いします。」
インタビュアー:「早速ですが、一連のプロジェクト、トップダウン、ボトムアップ、首長戦略アドバイザーの各プロジェクトについて、岡崎さんを含めてメンバークラスの職員のみなさんは、始まったことや、やっていることを把握していたんですか?」
岡崎さん:「詳しくは知らなかったんですが、首長戦略アドバイザーを募集しているってことや、新しいことを始めようとしているってことは、なんとなく耳にしていました。」
インタビュアー:「新しいことを始めますよー!って感じで、大々的に始まったわけではなかったのですね。」
岡崎さん:「はい。でもボトムアップが始まってグッジョブ運動が始まる時には、新しいことが目の前に迫ってきた感じだったので、「どうした南知多!」と思いました。笑」
インタビュアー:「なるほど、笑。どうしたって思うくらい新しかったんですね。それでご自身も提案されて、見事グッジョブ大賞を受賞されたわけですね。」
岡崎さん:「ありがたいことに、選んでいただきました。でも、本当に私1人の力ではできなかったことで、南知多町の職場の素晴らしさを実感した出来事でもありました。」
インタビュアー:「具体的に、どのような場面で素晴らしさを感じましたか?」
岡崎さん:「まず、所属する課のみなさんの協力があったからこそ、本来の業務以外の取り組みであるグッジョブ運動の仕事を進めることができました。また、プロジェクトで悩んでいたら、話を聞いてくださったり、意見をくださったり、本当にありがたかったです。」
インタビュアー:「理解があって、協力的な職場なんですね。」
岡崎さん:「それだけではなくて、とても温かい職場だと思います。」
インタビュアー:「南知多の人の人柄かもしれませんね。職場の雰囲気について教えていただきましたが、働きがい、やりがい的なことについてはどうですか?」
岡崎さん:「南知多は小さい組織なので、新しいことを始めやすい、変えやすいのかなと思います。だから私のようなメンバークラスの職員でも、活躍しやすい環境なのかなと思います。」
インタビュアー:「南知多町役場には、誰にでも活躍するチャンスがあるってことですね。」
岡崎さん:「そうとも言えるかもしれませんね。愛知県庁など、規模が大きい自治体だと、全庁的なことを変えるには時間がかかると思いますし、一般職員が知事に会って話をするなんてそう簡単にできません。その点、南知多は町長と直接話すこともできるし、提案したことはスピーディーに実行することができる環境です。なのでやりがいはありますよね。」
インタビュアー:「小さい組織ならではですね。」
岡崎さん:「幹部職員のみなさんも、いつでも話を聞いてくださるので、本当にありがたいです。」
インタビュアー:「部下が上司に対して不満がある場合も多いと思いますが、幹部職員の方に対して『ありがたい』と心から思えるなんて、素敵な職場ですね。」
岡崎さん:「はい。本当に温かくて、優しい人ばかりです。」
インタビュアー:「これからも存続し続けることを目指している南知多町で、岡崎さんもこれからも働き続けていくと思うのですが、育休後はグッジョブ運動の時のように、何かを提案したり、活躍し続けたいという気持ちはありますか?」
岡崎さん:「提案したりっていうのは、ちょっとわからないですが、笑。私、実は心配性で、石橋は結構叩きたいタイプなんです。だから自分の思いつきに対して、やっぱり無理だなと思うことも多々あるのですが、まずは提案を発信すること、発信できる環境が大切かなと感じます。その提案が通らなくても、そこから新しい物が生まれるかもしれないので。」
インタビュアー:「確かにそうですね。」
岡崎さん:「だから、これから南知多で新しく働く人もいると思うんですが、新しい提案に対して、否定せずに「いいね!」と一緒に盛り上がってくれる人が入ってきてくれたらいいなと思います。」
インタビュアー:「一緒に盛り上がってくれる人が増えれば増えるほど、南知多も盛り上がりますね。」
岡崎さん:「はい。実現できるかどうかは抜きとして、「いいね!」って盛り上がれる空気感があると、新しい考えもどんどん生まれていきそうですし。さらに安心して意見が言える職場になればいいなと思います。」
インタビュー:「安心して意見が言える職場って素晴らしいですね。今日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。」
岡崎さんのインタビューから見えてきたのは、南知多町役場の環境の良さと人の素晴らしさだ。それだけではなく、小さな組織ならではのメリットもお分かりいただけたことだろう。
素晴らしい環境と人がいるからこそ、メンバークラスの人も思う存分活躍できる。何より「安心して意見が言える職場」この言葉は、民間行政関係なく、誰もが求める理想の職場なのではないだろうか。
これから先、積極的に活躍したいと思っている人、岡崎さんと一緒に「いいね!」と盛り上げてくれるような人材が南知多に集まり、さらに南知多町が飛躍することを願うばかりだ。
2.グッジョブ運動に貢献!伊藤さんのインタビュー
続いてご紹介するのは、グッジョブ運動の立役者である、伊藤さんだ。
伊藤さんは、グッジョブ運動の提案者の中で中心的に活躍した人物で、オフィスカジュアルやフリーアドレスオフィスを提案し、実現させた。まさに働き方改革の立役者と言っていいだろう。
今回は、現場に立つ中堅管理職の立場として、一連のプロジェクトにどう向き合ったのか。職場に求めることとは?これからの南知多町についてどう考えているのか?などを中心にインタビューさせてもらった。
インタビュアー:「今日はお忙しいところありがとうございます。早速ですが、伊藤さんはグッジョブ運動で生まれた様々なプロジェクトの中で、中心的に活躍したと伺っています。アドバイザーの河上泰之さんとのやり取りもあったようですが、どうでしたか?」
伊藤さん:「そうですね。グッジョブで河上さんとも関わらせていただいて、色々とプレゼンに向けて相談させてもらったりしたんですが、役場という限られた範囲、組織での行政の凝り固まった固定観念、上層部の考え方とかも含めて、打破していくというか。様々な意味でご活躍いただいた印象で、個人としてもとても成長させていただきました。」
インタビュアー:「そうだったんですね。グッジョブ以前は河上さんからのアドバイスは受けていなかったんですか?」
伊藤さん:「オンラインで繋がることは何度かありましたが、本格的にアドバイスをいただいたのは、グッジョブでした。」
インタビュアー:「では、河上さんが南知多町と関わった一連のプロジェクトを通して、どのあたりで南知多の変化を感じましたか?」
伊藤さん:「自分が関わったのはグッジョブなので、やはりそこになりますが、全体を通して役場という、なかなか変革しにくい組織の中で、一石投じていただいたと言いますか。お会いすると常に『それって必要なんですか?』『なんでやるんですか?』という投げかけをいただけて、やっていることをもう1回考えてみる機会を作ってもらいました。」
インタビュアー:「そうだったんですね。」
伊藤さん:「考える習慣づけをしてもらえたと感じています。」
インタビュアー:「なるほど、なるほど。ではグッジョブの話に戻りますが、一番大変だったのはどこでしたか?」
伊藤さん:「そうですね。プロジェクト前後の変化としては、挑戦できる組織に確実に向かっていっているとは思うんですが、まだ入り口に立てた所というように認識しています。」
インタビュアー:「そうなんですね。」
伊藤さん:「大変だった所はということですが、大変っていうのは、今も大変だと感じている。その中でお伝えしたいことが2点あって。」
インタビュアー:「はい。」
伊藤さん:「まず1点は、職員全体が変わっていくためには、1人1人がこれは良いこと、これは自分のためになること、ということを理解して受け入れてもらうことが重要なポイントだと思っています。」
インタビュアー:「うん、うん。」
伊藤さん:「受動的な取り組みっていうのは、一過性のものにとどまってしまうので、人が変革に向かって能動的に取り組んでいく必要があると思っています。ただ。これが大変で。」
インタビュアー:「確かにそうですよね。」
伊藤さん:「そのきっかけとなる取り組みとして、グッジョブ大会が初めて開催されたことは大きな意味があったと思います。今後についても、職員に理解を深めていってもらえれば、能動的な取り組みがさらに進んでいくのかなと感じています。まぁでも、これが大変だなって感じていることの1つ目です。」
インタビュアー:「大変だけど、やらないといけない部分っていうことですね。」
伊藤さん:「その通りです。で、大変なことの2点目ですが、理想というか、現実問題として、自ら職場を変えていこうと挑戦していくためには、職員1人1人の余裕というか、ゆとりが必要だなと、感じています。」
インタビュアー:「『ゆとり』というと、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか?」
伊藤さん:「例えば、心、体、仕事、時間、プライベートな問題、みんないろんなものを抱えています。上層部が言いたいことはわかるのですが、急速に結果を求めるあまり、職場が『職員個人の問題は知らないよ』っていうのではなくて、大変な時はサポートし合える職場づくりが進めば、これから先プロジェクトの成功に繋がっていくんじゃないかと思います。」
インタビュアー:「素晴らしいお考えですね。」
伊藤さん:「これはもちろん職員を甘やかすってことで言っているんじゃなくて、現実問題として、毎日大変な思いをしてやっている職員もたくさんいるんで、ゆとりがないとですね、新たな取り組みに踏み出せませんし。個人的な感触としては、いい意味での遊び心、こんなことをやったら楽しいなって感じながらプロジェクトを進められたら、これから成功していくんじゃないかなって思います。」
インタビュアー:「やる気だけじゃ続かないですしね。周りがサポートする環境を作らないと、と感じていらっしゃるところが、素晴らしいです。」
伊藤さん:「ありがとうございます。」
インタビュアー:「前半のお話で、河上さんとのやり取りを通じて、行政独自の文化や価値観が変わっていったという内容のお話があったと思うんですが、それを実際に感じたエピソードってありますか?」
伊藤さん:「そうですね。グッジョブで私がやったノーネクタイ。今日もそうなんですけど。」
インタビュアー:「ほんとですね!今日はオフィスカジュアルなんですね。」
伊藤さん:「そうなんです。議会や特別な来客がある時以外は、楽な服装で働けて、ストレスを感じない服装で仕事もしやすいし、動きやすくていいなって感じています。」
インタビュアー:「いいですね!確かに、行政の人がTシャツで働いているって、私でもイメージにないです。」
伊藤さん:「ですよね。あとは、最近新たに職員の健康保持増進を目的に、椅子の代わりにバランスボールを採用してみてはどうかなと。」
インタビュアー:「えー!いいですね!」
伊藤さん:「賛同してくれる人も増えてきて、ただいま絶賛継続中です。」
インタビュアー:「いいですね!ビフォーアフターで、職場の写真を見てみたいなぁ。」
伊藤さん:「若い子が入ってきて、オフィスカジュアルだとか、そういった若い子たちが働きやすい新しい環境が必要なのかなと思っています。」
インタビュアー:「若い子の気持ちに寄り添ってくれる上司がいるなんて、部下の方は幸せですね。働き方についての話題に関連して、南知多の職場のいいところってどんなところだと思いますか?」
伊藤さん:「一連のプロジェクトを通して感じたことなんですが、南知多の職員って温かいなって思いました。いい意味で砕けたというか、あまり上下上下していないというか、アットホームなところがうちの職場のいいところだと思います。比較的、仲間意識も強いんじゃないかと思います。」
インタビュアー:「岡崎さんも同じようなことをおっしゃっていました。」
伊藤さん:「グッジョブの時の岡崎の提案とかも、私の提案とかも含めて、いい提案だと思えば、仲間意識の強さから軌道に乗って、いい成果を生むことができると感じています。」
インタビュアー:「お話をお伺いしていると、とても働きやすい職場のように見えるのですが、中間管理職として意識していることはありますか?」
伊藤さん:「そうですね、部下からどうみられているかという視点は、自分を律するという意味で大事にしています。これは、結構意識しています、笑。上司に対しては、現場を知っているものの立場として、臆することなく提言していく。いいことか悪いことか判断してもらうために、現場を知っている者として、しっかり提言していきたいと思っています。これは、これからも含めてというところですね。」
インタビュアー:「心強いですね。最後に、これから南知多で働きたい人や、南知多に興味がある人、どんな役場の雰囲気か知りたい町民の皆さんに向けて、伊藤さんから伝えたいことってありますか?」
伊藤さん:「お伝えした通り、アットホームな職場なので、そこにプラス働き方改革で働きやすさだとか、働きがいだとか、やりがいに繋がっていけばいいかなと思って取り組んでいます。働きやすいですよ、やり甲斐ありますよ、楽しい職場ですよってところを伝えていけるような職場になっていければなって思います。」
インタビュアー:「ありがとうございました!」
現場を知る中堅管理職だからこそ感じる大変さや、求める姿がお分かりいただけただろうか。常に部下のこと、働いている職員のことを考え、働きやすい環境づくりに尽力する伊藤さんは、上層部にも忖度することなく意見を言える頼もしい存在だ。逆にいうと、それを受け入れる上層部の方々もまた素晴らしく、全体が調和の取れた、まさにアットホームな職場なのだろう。
こんな人の元で働きたい!こんな職場いいな!と感じられるインタビューだった。
3.現副町長 高田さんのインタビュー
最後にご登場いただくのは、2023年4月から副町長になった高田順平さん。一連のプロジェクト当時は、まちづくり推進室室長だったことから、メンバークラス、中堅職員、上層部の全てを経験している存在だ。
今回は、一連のプロジェクトをどう見ていたのか、南知多町の変化をどのように見ていたのか、そして今後の南知多町についてのお話を伺った。
インタビュアー:「今日はお忙しい中ありがとうございます。時間が限られているので、早速ハードな質問で恐縮なのですが、南知多町役場のビジョン的なお話からお聞かせいただきたいと思っています。」
高田さん:「はい。よろしくお願いします。」
インタビュアー:「アドバイザーの河上さんとのミーティングの中で、『南知多町がなくなることを想像したことはありますか?』や『存続するか、やめるか』みたいな話があったと思いますが、聞いた時はどう思いましたか?」
高田さん:「そうですね、河上さんとはウェブでお会いして、随分初期の頃に、『南知多町をいつまで続けるおつもりですか?』という衝撃的なことを言われました、笑。」
インタビュアー:「インパクトありますね、笑。」
高田さん:「はい、笑。当然それまでも、今現在もなんですが、南知多町をずっと続けるっていう思いは変わりません。」
インタビュアー:「はい。」
高田さん:「河上さんに『合併っていうことを視野に入れていいのであれば、役場がやることは随分変わるよ』と言われ、感銘を受けた覚えがあります。」
インタビュアー:「なるほど。」
高田さん:「でも、うちの首長も他の職員も、ありがたいことにそっちの方には行かないと思っていて。南知多町を100年、200年先も残すんだ。そんな気持ちでいます。」
インタビュアー:「そうなんですね。」
高田さん:「河上さんとの出会いは、南知多をこれから先も残すためには何をやらないといけないのかってことを考えるきっかけをくれた、そう感じています。」
インタビュアー:「南知多をいつまで続けるつもりか、なんてストレートに言われることってないですよね。その場には、幹部職員の方は全員いたんですか?」
高田さん:「はい、いました。」
インタビュアー:「じゃあ、幹部職員全員が危機感を持った、という感じでしょうか?」
高田さん:「全員が全員というわけではないと思います。ピンと来る方はピンときているし。だからこそ、一連のプロジェクトは、一石を投じていただいたという感じがすごくあります。」
インタビュアー:「なるほど。そんな中でトップダウン型プロジェクトから始まっていったと思うんですけど、始まるって聞いた時は、率直にどう思いましたか?」
高田さん:「そうですね、始まった頃は、まだ僕は中間管理職だったので、トップダウンでやってもらいたいという思いが強かったです。上層部、部長さん以上3役の方で、決めることは決めてもらいたいなと思っていました。」
インタビュアー:「そうだったんですね。」
高田さん:「ただ、今自分も上の立場になってみると、決められないものは決められない。どっちの立場もわかるようになってみると、どっちかに偏るのではなくて折衷案で動くことの方が大事なのかなということに気づかせてもらったという感じです。」
インタビュアー:「両方の立場がわかるからこそ、そのような考えに至ったということですか。」
高田さん:「はい。」
インタビュアー:「では、次にボトムアップでやると聞いた時がどうでしたか?」
高田さん:「そうですね、役場が変わっていくためには、うちの町にはじっくりやるっていう余裕はないんだよな、っていうところで。ボトムアップもやらないといけないっていうふうに、その当時周りの人間とも考えて舵を切りなおそうじゃないかという感じでした。これをトップのほうも受け入れてくれたっていうところです。だから折衷案じゃないですけど、ボトムアップはそういうところで動き出すきっかけになったんじゃないかと思います。」
インタビュアー:「そこからグッジョブ運動が始まったと思うのですが、高田さんはどのような立場だったんですか?」
高田さん:「私は事務局にいました。河上さんを招き入れてこんなことをやっていきましょうっていう、まちづくり推進室の室長をやっていました。」
インタビュアー:「その当時、河上さんとは結構話していたんですか?」
高田さん:「そうですね。週1で話していました。」
インタビュアー:「どんな話をしたんですか?」
高田さん:「取り止めもない話から物事の考え方、捉え方とか。やっぱり考え方が我々公務員とは違うなぁという感じで。なんでそうなるのかということも、ちゃんと理論立ててお話しいただけたので、毎回腑に落ちる感覚があったと記憶しています。」
インタビュアー:「そうだったんですね。長く公務員をしている高田さんからすると、新しい考えや価値観を教えてもらった感覚があると思うのですが、河上さんと話したからこその変化って、何か具体的にありますか?」
高田さん:「私は平成6年からずっと南知多役場に勤めているんですが、振興部門とかにずっといたせいか、『公務員古いよな』って言う違和感が、どこかにあったんです。河上さんには、この違和感が「何か」を気づかせてもらったって感じです。それで、この違う部分をどうやって他の人に伝えて、納得してもらって、自分たちの施策に盛り込んでいくか、っていうことをできるようになってきたのがここ数年だと思います。」
インタビュアー:「なるほど。では南知多町全体ではどうでしょうか?河上さんが入ったからこそ変わったところはありますか?」
高田さん:「そうですね。いろんな施策をとりあえずやってみるっていうことが、少しづつ始まっているように思います。完璧なストーリーを描いてからやるのではなく、良さそうだからやってみようぜ!っていうのが、ここ2年で 見られるようになりました。」
インタビュアー:「うん、うん。」
高田さん:「まずテストとしてやってみましょうっていうプロジェクトが何本も動いてるんじゃないかっていうのが、事実としてあります。」
インタビュアー:「なるほど。何か具体的なエピソードはありますか?」
高田さん:「そうですね、今日ちょっとワイシャツを着ちゃっているんですけど、南知多スタイルってことで、自分たちの服装を自分たちで考えようっていう。クールビズを超えて働きやすい服装っていうところで、2年目を迎えます。あとは3階の成長戦略室のフリーアドレスですね。固定の机を決めずに、働きやすいところで働くっていう取り組みで、それに伴ってペーパーレス化なんかも進んでいます。この辺りが「良さそうだからやってみよう!」から始まって、目に見えて変わったところです。」
インタビュアー:「伊藤さんもおっしゃっていたんですが、『絶対これ』って断定せずに、改善したり変更しながら進めていくことが大事だっていうことですよね。
高田さん:「その通りです。」
インタビュアー:「では、今取り組んでいることとして、ふるさと納税などがあると思うのですが、ふるさと納税に力を入れていくことについてはどう思いますか?」
高田さん:「今の町長が立候補する時に、ふるさと納税で4億円集めますって宣言してもらいました。町長が言い出したんじゃなくて、職員が『南知多には4億円必要なんだ』って言ったことを宣言してもらったっていう形なんですが。町長が職員を信じて盛り込んでくれたと思うので、言い出しっぺの職員が何がなんでも実現していかないといけないと、プレッシャーを感じながらも動いているところです。」
インタビュアー:「4億円って、かなり大変だと伺っていますが。」
高田さん:「そうですね。最前線でやっている成長戦略室のメンバーは、本当に大変だと思います。自分は、今はサポートする立場ですが、場合によっては自分が先頭に立ってやらないといけないと思っています。」
インタビュアー:「今、副町長という立場になりましたが、一番変わったところってなんですか?」
高田さん:「これが、まだ実感がないですね。」
インタビュアー:「副町長になってからどのくらいでしたっけ?」
高田さん:「4ヶ月くらいですかね。これからです。」
インタビュアー:「では、部下にはどのように働いて欲しいとか、副町長として何かありますか?」
高田さん:「そうですね。いろんな提案を持ってきてもらいたいと思っています。提案を持ってきてくれたら、私も経験年数が長いですから、ああいうやり方があるんじゃないか、こういうのがいいんじゃないかってことをアドバイスできると思うんです。それこそ、河上さんのようなアドバイスができるようになればいいなと思っています。」
インタビュアー:「それはいいですね。」
高田さん:「ただ職員の中には、提案をもってこいっていうこと自体がとてもプレッシャーになるっていう方もいるんで、難しいところなのですが。そこも全部ひっくるめて、ストレスをストレスと感じない、ストレスを楽しめるような職員が、うちみたいな役場には必要なんじゃないかなって思います。」
インタビュアー:「挑戦的な人物はウェルカムということですね。」
高田さん:「御社の指示に従います!っていう人よりも、こんなことをやってみたい!っていう人が増えてくれるといいなと思います。」
インタビュアー:「これから南知多町がさらに盛り上がるといいですね!今日はありがとうございました。」
高田副町長の口から出た「南知多を100年も200年も残すんだ」という想い。上層部、中管理職、どちらの立場も経験した高田副町長の存在は、南知多町の職員間の調和をとり、より円滑にプロジェクトを進めることに貢献し続けることだろう。そしてこれから先、南知多町はさらに良い組織になっていくことが想像できた。
とりあえずやってみようという精神を大切に、チャレンジする若手をサポートしてくれる頼もしいリーダーが南知多町には存在した。
4.挑戦的な人材が活躍できる、協力的で温かいアットホームな職場!それが南知多町の基盤だった!
インタビュー前、3人に共通してお伝えしたことが、「飾らずお話しください」ということだったが、3人が3人とも、それぞれの立場を敬い、気遣い、感謝する言葉を口にした。
これは、ここで語られたことが嘘ではなく、真実である証拠で、南知多町は働いている人や環境がいいからこそ、ここまで一連のプロジェクトを通して成果を出し、短期間で変化することができたのだろう。
ここからはインタビューをさせていただいた私の個人的な感想であるが、南知多町役場で働く人たちの印象は、私がこれまで出会った行政の方のイメージとは違う印象を持った。
いわゆる役場の人というと、どちらかというとドライで、融通が効かないようなイメージがあったが、今回インタビューを受けてくださった3人は、柔軟な思考を持っていて、温かくて人情味がある雰囲気を感じた。何よりも、南知多町への愛をとても感じた。
ここまで南知多町の組織改革について記載してきたが、南知多の基盤には、マインドの部分だったり、思考の根っこの部分から、他の市町村とは違うところがあるのではないかと思った。経営の資源はよく、人・物・金であると言われるが、南知多町は人の部分が大きな資源となっていて、南知多町を変えていく基盤になっている、このように感じた。