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「みんなが気持ちいい農業を」元ギャル服デザイナー、自然と共生する農業を始める。

南知多町には、自然と共生する「循環農法」を行っている農園が40年以上も前からあります。

まだ「無農薬栽培」が一般的に知られていない頃に開業、年間を通じて美味しい野菜や玉子を全国に発送しています。

「とりのさと農園」二代目の秦 由岐穂(しん ゆきほ)さんに、名古屋市在住ライター古野孝治がインタビューをしました。

※東京と南知多町での生活の違いや、どうして多様性が大事なのかなどを
根掘り葉掘りお聞ききした後半のインタビューは以下よりご覧いただけます。

「食べもので命を豊かに」元ギャル服デザイナーの自然と共生する農業への挑戦

秦さんは元々、東京でギャル服のデザイナーをやっていたという面白い経歴の持ち主なのです。
農業を始めたきっかけや農業に対する思いをお聞きしました。

ぜひ、お楽しみください。


― ― 「とりのさと農園」は由岐穂さんが二代目ということでしたが、どのような経緯で農園をやることになったのですか?

この農園は、今から40年以上前に、私の母と父が2人で始めたんです。

母はそれまで養鶏雑誌の記者をしていて、当時の日本の養鶏のあり方に触れるなかで違和感を持っていて、鶏にストレスの少ない飼い方をしたい、と思っていたんです。

父は、名古屋でサラリーマンをしながら公害問題で苦しむ方々を支援するボランティア活動をしていて。
それは、公害により海で漁をできなくなった漁師の方々が、化学的な薬を使いたくないと育てたみかんを、父が仕事が終わったあとに名古屋中を回って売っていたんです。

そういう活動を通じて両親は知り合い結婚したのですが、自分たちが汚した水や空気は自分たちの口に帰ってくるんだっていう意識を、両親ともに持ってたんですね。

頭でっかちに口で言うことはできても実践できないと、そこには説得力がないっていうところで、自分自身でやってみたいという気持ちが両親にはあって、それで二人が一念発起してこの農園を始めて、私が生まれたんです。

<秦さんの子どものときのご家族写真>
<秦さんのご両親>

― ― そうだったんですね。それで南知多町に移住されたのですね。

ありがたいことに40年以上前に南知多町のみなさんが受け入れくださいました。

両親は、私を自然の豊かなところで育てたいっていうのと、命を育んで食に向き合う親の姿勢を見せながら子育てしたいっていう思いがあったようです。
二人とも全てが初経験のなかで、イチから山を開墾して独学で手作りの鶏舎を建てるところから始めました。

役場の方々も協力してくださり、鶏舎や農場をつくることができました。
そのことに今でも父も母もずっと感謝しています。

<とりのさと農園初期の写真①>
<とりのさと農園初期の写真②>

そういう環境で育ったので、農業は身近にあったんですね。
私は以前、東京でギャル服のデザイナーをしていましたが、2010年に(南知多町に)戻り、(農業を始めて)今年で13年目になります。

<とりのさと農園の鶏舎へ移動>
― ― あちらに鶏の鶏舎がありますね。

はい、ゴトウのモミジ、ヒペコ・ネラ、ホシノブラックの3種類の鶏(にわとり)を飼っています。

― ― なぜ鶏を3種類も飼っているのですか?

3種類とも性格や好みが違っているんですね。

3種類飼うことで、その年の天候や気象状況や与えられる餌が変わっても、一定の玉子の品質を保てるようにしています。

ゴトウのモミジは、人懐こっくて、人がそばに来ても産卵が減ることはありません。ただ、人間と付き合ってきた時代が長いせいで、結構グルメで雑草とか繊維の強いものは嫌がってあまり食べません。

オランダ原産のヒペコ・ネラは、気性が荒く、人からのストレスを感じやすいです。人が近づくだけでも騒いで、産卵が減ることもあります。ただ、体が小ぶりで暑さにも強く、雑草や硬い野菜など、何でも食べるので、餌による変化が起こりにくいです。

ホシノブラックは、体が他の鶏に比べて1.5倍くらい大きくて、スタミナがあります。冬の寒さに強く、季節性のストレスの影響を受けにくいです。

<鶏は3種類!>

一般的な考え方だと、一つの品種をたくさん作ることで、生産や品質を安定させようっていうのが普通の考え方だと思います。

でも私の場合は違って、いろんなものをいろいろ作ることで、その多様性でもって安定を図ろうというのが、私のやり方です。

だから、うちの玉子は1パックの中に3種類の鶏の玉子が全部入るようになっています。

― ― 多様性によって生産が安定し、環境の変化にも強くなるんですね。

うちのいちばんわかりやすい特徴は、「鶏舎のそばでも匂いがしないこと」

最近の平飼い飼育では、だいたい坪20~30羽くらいで飼いますが、うちは坪7羽で飼っています。

地面の上で飼う鶏の数が少ないから、地面の糞が常に乾燥して、微生物が分解するスピードを越えないようにしています。
だから悪臭も出ないんです。

鶏舎が広々としてるから、鶏たちも自由に砂浴びしたりひなたぼっこもできて、ストレスが少ないので、鶏たちも健康的だし、糞も健康的な糞になります。
この鶏糞を畑にまいて肥料にして、野菜を育てて、そしてまたその野菜の一部を鶏が食べて。この循環した形が、私の農園のスタイルです。

<とりのさと農園の循環農法>

(鶏を)もっと詰めれば、今の3倍4倍飼えるんじゃない?って言われることもあるんですけど、そのやり方しちゃうと、今みたいな心地の良い空間ではなくなるだろうし、玉子の味も変わってくるだろうし、地域の方が感じる影響も変わってしまうだろうと思っています。

<鶏の産卵風景>

みんなが気持ちのいい形で農業をやりたいなっていうのがあるので、利便性や経済性だけではないところを大事にしています。

<とりのさと農園の畑へ移動>
― ― 畑ではどのくらいの野菜を作っているのですか?

畑では年間120品目の野菜を作っています。それを詰め合わせて、うちと契約されている全国のご家庭に送っています。

8~12品目くらいをまとめて野菜のセットにしてお送りするので、菜っ葉ばかりとか、根菜ばかりにならないように、常にバランスを考えて野菜を育てています。

<野菜セット(季節により内容が変わります)>

農薬を使わないで栽培しているので、虫から守って育てないといけなかったり。
なので畑にネットを被せたりなど、手間はすごくかかりますね。

でも、鶏糞が肥料となり野菜を育てて、ここの野菜くずや雑草を鶏が食べてっていうサイクルが気持ちいいじゃないですか。

― ― 生命の循環によって、お互いが助け合っているのですね。

そういう命の姿って感動するし、それに冬の寒さに耐えたものを食べると自分も冬に強い体になるんだろうなって思います。季節の元気をもらえるというか。

こういう、季節を食べる楽しみみたいなものは、都会だとなかなか感じられないと思うんですけど。

命の基本的な、普遍的なメッセージを受け取っているような気持ちになります。
うちの消費者の方の中には40年以上のお付き合いの方もいますが、そういうことをみなさんが感じてくださって選んでいただいているのかなって思います。

― ― 私自身、都会で暮らしていた時は季節の野菜を食べるという感覚があまりありませんでした。野菜を食べることを通して、そういう命を感じるということを大切にしたいと思います。

<畑にて野菜の説明を説明している秦さん>

「とりのさと農園」二代目の秦 由岐穂(しん ゆきほ)さんのインタビューの続きはこちらよりご覧いただけます。

「食べもので命を豊かに」元ギャル服デザイナーの自然と共生する農業への挑戦

東京と南知多町の生活の違いや、多様性の大切さについて詳しくお聞きました。
ぜひ、ご覧ください。

とりのさと農園のご紹介

とりのさと農園では農薬を使用しないで育てた野菜の詰め合わせセットや平飼い玉子を全国発送しています。

以下より、とりのさと農園の詳細をご確認いただけます。

※農園は鶏の健康維持や農場の衛生管理の都合上、一般公開されていません。何卒、ご了承ください。

とりのさと農園の野菜や玉子を通して、自然の美味しさや生命の感動をぜひ味わいください!


WEBライター 古野孝治

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