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「食べもので命を豊かに」元ギャル服デザイナーの自然と共生する農業への挑戦

南知多町には、自然と共生する「循環農法」を行っている農園が40年以上も前からあります。

まだ「無農薬栽培」が一般的に知られていない頃に開業、年間を通じて美味しい野菜や玉子を全国に発送しています。

「とりのさと農園」二代目の秦 由岐穂(しん ゆきほ)さんに、名古屋市在住ライター古野孝治がインタビューをしました。

※農業を始めたきっかけや農業に対する思いを詳しくお聞きした前回のインタビューはこちらよりご覧いただけます。

「みんなが気持ちいい農業を」元ギャル服デザイナー、自然と共生する農業を始める

秦さんは元々、東京でギャル服のデザイナーをやっていたという面白い経歴の持ち主なのです。
東京と南知多町での生活の違いや、どうして多様性が大事なのかなどを根掘り葉掘りお聞きしました。

ぜひ、お楽しみください。


― ― 南知多町で農業を始めてから感じられたことはありますか?

自分のやりたいスタイルで、やりたいように伸び伸びとやれるっていうのは本当に幸せなことだなと思っています。

緑豊かだし、子供もこういうところで伸び伸びと育って、地域の方にもよくしていただいて本当にありがたいなと思って農業をやっています。

 <お子さんとコミュニケーションをとりながら収穫>

― ―  以前、秦さんは東京でギャル向けの服のデザイナーのお仕事をされていたのですね。

以前は、ギャルと呼ばれるような女の子向けの服のデザイナーをしていました。
女の子たちの興味や欲しいもの、トレンドが常にコロコロ変化する業界でした。

ニーズに対して商品を出すということが、すごくクイックだったんですね。
日曜日に売れたものがあると、次の日からそれの別アイテムを作って、次の日曜日までに店頭に出すっていう感じでした。

デザイナーといっても、自分の好きなデザインをするのではなく、求められているものを形にする仕事だったので、今の仕事に生きている部分があるかなと思います。

消費者が何を求めてるかとか、どういうところに注目しているのかなということを意識するようになりました。

<とりのさと農園のホームページも自分で手作り>

― ― 東京での生活と今の生活で変わったことはありますか。

都会にいるときはいろんなものが便利で、一番その最先端の部分だけで生きてるという感じでした。

ですがここだと、本当に原始的なところからやらなければいけません。
当たり前のことを、自分は分かってるつもりでいるだけで、実際自分の手を動かさないとわからないことばかりだなと感じています。

例えば、当たり前に飲んでる牛乳とかも、なんとなくイメージでは、牛はみんな牛乳が出るようなイメージになっちゃうんですけど、でも、子供を産んだメスだけしか、牛乳は出ないですよね。

そういうような「命の当たり前の仕組み」が、都会にいると本当に忘れてしまって、分からないままでも生きてこれてしまうんですけど。
でもこうして畑に来ると「自分はこんなことも分からずに生きてきたのか」っていうぐらいびっくりすることが多くって。

<鶏舎の中にてご家族と>

― ― 確かに当たり前のことほど、忘れがちになりますね。

でも、逆に言うと、それに気づいたときって驚いたり感動があったりするので、都会にいる人に、そういえばそうだよな、命ってそうだもんなって感動してもらえるようなものが届けられたらいいなと思うに至りました。

どういうものが、私達にとっては当たり前だけど都会の人にとっては再発見なのかっていうところを、常に意識して見るようにしています。

食べものの命と自分が繋がってるんだなって思えると、食べるときの気持ちも変わってくるし、何か自分の命も豊かになったような気持ちになります。

小さなお子さんがいるご家庭では、私のお便りをお子さんと一緒に読んでくださって、感想のお手紙をいただいたりして、そういうのがとても嬉しいですね。

<とりのさと農園様 季節のお便り>

― ― そうなんですね。無農薬の野菜だと子どもから大人まで安心して食べられるイメージがあります。

うちはどちらかというと、無農薬だから安全かとか、そういうのはよくわからないので、そういった情報の発信の仕方はしていないんです。

私としては、両親が(農薬を)使わないでやれてきたので、使わないままいきたいなっていう気持ちでやっています。
やっぱり自分が使ったことがないものなので、使わないまま育てられたら気持ちがいいなっていうだけで。

農薬を使う一般的な慣行農家さんでも関係なく、もう今この日本で農業をやろうというだけで本当に尊いし、ありがたいなっていう気持ちです。

地域で農業をやってくださるだけでもう本当に嬉しいなと思っています。
そういう意味で農業も多様性があっていいのかなっていう感じでいます。

― ― そこにも多様性があるのですね。

私の野菜ってすごく素晴らしいなって私は思うんですけど、だからと言って、他の農場の野菜が悪いということになりません。
何かを悪く言わなくても、うちの野菜はうちの野菜ですごくかわいいんです。
なので、自分の野菜のかわいさを一生懸命説明してるっていう感じですね。

食べもので人にプレッシャーを与えたり人を責めたり追い詰めたりっていうふうにするのはすごく嫌なんです。
食べものは、食べる人を応援できるものであってほしいし、元気にできるものであってほしいんです。

なので、楽しい気持ちで料理していただけるように、(野菜を送るときに)レシピをいっぱい付けたり、子どもの食べやすい調理方法とか、そういうのを一緒に共有しながら、食べる楽しみや豊かさを深めていけたらいいなと思っています。

いろんな多様性の中で農業をやっているわけですから、人に対しても、そういうおおらかな気持ちでいれたらいいなと思ってやっています。

<ひよこと触れ合うお子様>

― ― 多様性が生命の本来の強さを発揮できるようになっているのですね。これからも美味しい野菜や玉子を楽しみにしています。

とりのさと農園のご紹介

とりのさと農園の採れたての壬生菜(みぶな)と玉子を食べさせていただきました。
壬生菜は、葉がしっかりと厚いのに雑味がなく、噛めば噛むほど植物本来の味が滲み出て、自然の美味しさに包まれるようでした。
また、玉子は優しい風味の中にコクがあり、玉子好きな家族もうなるほどの美味しさでした。

とりのさと農園では農薬を使用しないで育てた野菜の詰め合わせセットや平飼い玉子を全国発送しています。

以下より、とりのさと農園の詳細をご確認いただけます。

※農園は鶏の健康維持や農場の衛生管理の都合上、一般公開されていません。何卒、ご了承ください。

とりのさと農園の野菜や玉子を通して、自然の美味しさや生命の感動をぜひ味わってください!


WEBライター 古野孝治

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