まちと命を守る防災
愛知県南知多町は、知多半島南部に位置し、半島の先端と篠島・日間賀島などの島々からなっている。東に三河湾、南西は伊勢湾に面した海と関わりが深く、他にも名所、旧跡、文化財、祭りなど観光資源が豊富。自然を利用したレクリエーションの基地としての整備も進み、四季型観光地への条件を整えつつ広域観光ルートの確立を目指している。
南海トラフ地震
海と関わりが深いということから、南知多町は災害対策にも力を入れている。
2023年2月1日現在の日本において、最も重大な災害と予想されている災害のひとつが「南海トラフ地震」である。
気象庁の関連ページを見てみると、南海トラフ地震発生により、東海から九州にかけて、揺れが大きい地域では震度7となる可能性があるほか、広い地域で震度6強から6弱の強い揺れになると記載されている。また、災害は地震のみならず、太平洋沿岸の広い地域に大津波の襲来も想定されている。
そのような予測がなされる中、愛知県南知多町は「南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域」に指定されている。
海際の市町村は地震だけではなく、台風や津波、高潮など、災害の被害想定が大きい傾向にあるため災害対応力を高めることが非常に重要である。愛知県南知多町もそのような、災害対応力を高める必要がある市町村のうちの一つである。
防災対策
南知多町ではどのような災害対策を講じているのだろうか。南知多町防災担当者に伺った話や公開されている資料をもとに、実際に南知多町の防災に関する制度や設備を見ていきたい。
まずは災害発生時の情報伝達方法について見てみたい。
情報伝達方法は、大きく分けて以下の9種類に区別されている。
①防災行政無線・防災ラジオ
②町メールサービス
③知多半島ケーブルテレビ
④漁協エリアトーク(離島での島内放送(家庭内に受信機あり)
⑤町公式Twitter
⑥町ホームページ
⑦広報車
⑧愛知県津波高潮防災ステーションネットワーク
⑨豊浜漁業無線局(災害時に水産漁業関係者への情報伝達)
訓練
南知多町が一般的な市町村と違うのが、離島を有する災害対策をする必要があるという点であるが、漁協エリアトークの整備を行っていたり、海上輸送ルートが途絶した津波災害を想定した陸上自衛隊ヘリによる物資搬送訓練を実施している等、町内全域をカバーした災害対策をしている。
その他、ヘリコプター離着陸の際の訓練を毎年実施しており、地元消防団員が知多南部消防署員により指導を受けており、有事の際に町民を守るための活動を町内一体で行っている。
防災ラジオ
防災ラジオの販売にも注目したい。特に山側の無線が届きにくい世帯に配布される傾向にある防災ラジオについても、家の中でも防災情報が聞けたほうが良い、という観点から平地の家庭向けにも販売している。また、災害時に特に防災情報に留意する必要がある要配慮者のため、災害時要配慮者名簿に登録されている方には無償で配布を行っている。これらは、緊急の防災情報を入手するという、町民の一人一人ができる災害対策として重要なことである。
防災備蓄計画
災害発生時の情報伝達方法がある程度理解できたところで、次は備蓄計画について見てみたい。
南知多町では、愛知県が平成26年5月30日に公表した南海トラフ地震の被害予測結果を参考に、「防災備蓄計画」を策定している。
防災備蓄計画内にも書かれているように、市町村の備蓄の目的は「自助・共助により賄われる備蓄物資等を補完する」目的で行う。
災害対策の中でよく耳にするキーワードの一つとして、「自助・共助・公助」というものがある。簡潔に言うと、自助はその名の通り自分で自分の身を守ることを意味し、共助は地域の人々で互いに支え合うことを意味する。
南知多町では、被害予測をもとに事前に備蓄食料や防災資機材の整備を行い万全の体制をを整えてはいるものの、被害予測というのはあくまでも「仮」の予測でしかなく、究極的には自分の身を守るのは自分自身となる。
日頃からどのようなものを備蓄しておけば良いのか、南知多町の防災備蓄計画はそれを考えるための良い指針となっている。
町担当者も「南知多町は知多半島の先であることや離島であることから、支援が遅くなるかもしれないので、備蓄をする意識を高く持っていただきたい」とコメントしている。
その他
その他にも南知多町では災害対策に注力している部分が多く見られる。
ハザードマップの整備はもちろんのこと、いわゆる共助の部分をメインに担う「自主防災組織」は町内31区全てで整備されており、内海・山海地区においては内海山海防災連絡協議会を、豊浜・豊丘地区においては豊浜地区自主防災会を組織し、各区の自主防災組織のとりまとめを担っている。
また、地震発生時の建築物の倒壊による被害を軽減するため、木造住宅耐震改修費補助(上限100万円)及びブロック塀等撤去費補助(上限20万円)の制度も設けている。
なお、南知多町では津波被害も想定されていることから、防災に関する情報を一層分かりやすく伝えるため、日本語が読めない海外の方等どのような方にでも意味が伝わるよう津波一次避難場所の案内板には、災害時用ピクトグラムを導入している。
現代では自然災害の被害も増えてきており、「災害に強いかどうか」という条件も、その街に住むにあたり、非常に重要な要素となってきている、あるいは今後一層なっていくと予想される。
日本列島はその地質学的な性質上どうしても災害が多く発生してしまう傾向にあり、東日本大震災や阪神淡路大震災等大きな災害は記憶に新しい。また、台風や水害等も非常に多く発生しており、これら全ての災害を防ぐことはほぼ不可能と言っても過言ではない。
そのため、「災害を無くす」のではなく「どのように災害の規模を小さくするか」であったり、「どのように災害と向き合っていくか」という考え方、いわゆる「減災」のための行動が大切になってくる。
そして、南知多町の防災を調べていくうちに、その「減災」のための対策を日頃から積極的に整備・行動していることがわかった。
防災担当者に確認したところ、南知多町では毎年のように災害対策本部を設置しているようだが、毎年のように発生する大雨や台風に対する災害対策本部の運営ノウハウや、それらの災害に伴う避難所開設・運営のノウハウがあることも「減災」のための確かに糧になると思われる。
最後に
最後に、南知多町防災担当に日頃から災害に対して町民の方々に意識していただきたいことをお伺いしたところ以下のコメントを頂いたのでご紹介したい。
※記事の中で記載しきれなかった南知多町のその他「災害対策」の一部を以下に記載
町民や観光客が円滑な津波避難が行うための方針を定めた「津波避難計画」を作成し各地区の避難人数等を考慮して、避難場所を整備。
津波一次避難場所(高台避難場所)の整備(師崎山ノ神)
自主防災組織向け津波避難路等整備費の補助
防災講話等で、円滑な避難のための家具転倒防止を啓発
内海海水浴場で津波避難訓練を例年実施(R2~R4は新型コロナで中止)
海水浴客の避難誘導を海の家の店員等がオレンジフラッグにより実施
自主防災会のリーダー養成を目的とした「地域防災リーダー養成講座」の開催