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新たな魅力や価値を生み出す商工業

農業や漁業、いわゆる「1次産業」は私達の生活を支えている側面が大きいにも関わらず、近年、従事者の高齢化や後継者不足により、1次産業従事者は減少傾向にある。
 
これはある種自治体にとっても非常に大きな悩みの種である。特に郊外では、ブランド米やその他有名な農作物等を通して町独自の魅力を伝えてきた自治体が数多くあるが、そのような自治体にとって1次産業が衰退することは、その自治体の魅力度やブランド力の低下を招いてしまう可能性もある。

つまり、1次産業が衰退してしまうことは商業的な側面のみならず、ブランディング的な側面においても劣勢を強いられることに繋がりかねない。 自治体が自治体の価値を残し磨き続けていくには、1次産業をどのようにして発展させるかという視点を持つことも大切であると考えられる。

6次産業

そんな中、近年「6次産業」という言葉に焦点が当てられている。

6次産業とは、1次産業従事者が、自身の生産物の価値を一層高め、所得(収入)を向上させていくものであり、生産(1次)、加工(2次)、流通・販売(3次)にも取り組み、1次産業を活性化させ、経済を豊かにしていこうとするものである。この6次産業を通して自治体の根幹である1次産業を再生・発展させようと試みている自治体は数多く存在する。
 
6次産業において重要なキーワードの一つに「総合化事業計画」というものがあり、事業者として6次産業に取り組む上で必要な計画のことであるが、これを国に認められると「総合化事業計画認定者」と認められ、公的機関から様々な支援が受けられるようになる
 
愛知県南知多町でも、新たな魅力や価値を生み出す商工業の一環として6次産業に向けた取り組みを行っている。

南知多町では現在5つの事業(※1)が総合化事業計画として認定されている。事業者へのサポートの一環として、総合化事業計画の認定者になった場合、町から6次産業推進補助金を最大3年間、上限100万円(補助率1/2)支出している。

南知多町では、6次産業化を考えている方に対し、まずは総合化事業計画の認定を受けていただくよう勧めており、総合化事業計画の策定支援を受けたい方、または6次産業化補助金を希望する方に対し「愛知県農山漁村発イノベーションサポートセンター」に相談してもらうよう勧めている。

計画策定に際し、サポートセンターからその道のプロの専門員が派遣されサポートしてもらえるという点、総合化事業計画が認定されると、「農山漁村発イノベーション等整備事業」等の各種補助金の交付を受けることができるようになるという点、2点の大きなメリットが理由である。

また、南知多町では今後、「農山漁村発イノベーション推進戦略)」の策定も見込んでおり、策定されれば、農山漁村発イノベーション等整備事業において、補助率が3/10→1/2に跳ね上がることになるため、6次産業を考えている事業者に取っては非常にありがたい内容である。

「ミーナの恵み」ブランド

上述したような6次産業への注力施策とあわせて注目したいのが「ミーナの恵み」ブランドだ。

南知多町の豊かな自然や文化などに育まれてきた素材と、優れた技術・技法から生み出された数多くの町産品の中から、特に優れたものについて、南知多町産業振興協議会が認定を行う「ミーナの恵み」ブランド認定制度であり、そこで認定された商品である「ミーナの恵み」ブランドを南知多町のブランドとして確立し、優良産品の更なる育成を図るとともに、町内外へその魅力を発信している。なお、現在は7つの商品(※2)がブランド認定されている。

ブランド認定品は、町のHPや、CCNC(地元ケーブルテレビ)で主にPRされており、町の産業まつり内でもミーナの恵み商品などを販売・PRされている。

ブランド認定を目指した取組みを促進することにより、南知多町の認知度の向上、観光物産の振興、事業者の意欲の高揚、地域産業の活性化が図られるような枠組みとなっており、ミーナの恵みを通して、町と事業者が一体となって6次産業を発展させる好事例と言えるだろう。

ふるさと納税

さらに、ミーナの恵みはふるさと納税にも出品登録がされている。返礼品などとして扱われることで一層の事業の活性化・ブランド認定品の認知度アップにも繋がってくる。事業者として非常にありがたいことだ。

南知多町では、財政面の課題解決等の側面から、ふるさと納税事業(※3)自体にも注力しているようだ。以下の表にあるように、令和2年を除き、近年では毎年寄付件数及び寄附金額が前年よりも増加している。令和4年に関しては平成30年の2倍の金額となっており、いかに町がふるさと納税戦略に力を入れているのが分かる。

南知多町のふるさと納税寄付件数及び寄附金額

町担当者に確認をしたところ、南知多町では、これまでは「さとふる」「楽天ふるさと納税」「ふるさとチョイス」「ふるなび」といった大手4社に情報掲載するのみで、専門の部署等が存在しなかったようだが、令和5年度からは組織内に「成長戦略室」という専門部署・専任の担当を設け、既存返礼品のブラッシュアップ(掲載サイトの写真・文言等の変更)や、地元事業者と連携した返礼品の開発等を計画しているとのことであった。その上で、令和5年度の目標寄付金額を4億円と設定している。

ふるさと納税に関する組織改変にあたり、ふるさと納税施策に成功している他自治体の視察も行ったという話もあったため、南知多町のふるさと納税への熱量の高さが伺える。

まとめ

新たな魅力や価値を生み出すためには、行政と事業者がお互いに手を取りながら自治体を盛り上げていく必要がある。言葉では簡単そうに聞こえるが、実情を見てみると一方通行的な自治体も多いように見える。おそらくそこに足りていないのは「事業者が何を望んでいて何に困っているのか」という行政側の事業者理解の部分ではないか、と筆者は感じる。

今回伝えてきた南知多町でも、魅力的で価値のある商工業を実現する面においてまだまだ多くの課題があるかもしれないが、その中でも官民一体となって町を発展させていくという姿勢が随所に見られた。これからも「地元力」を高めるため、引き続き町内事業を発展させていくとともに、そこから生まれる価値を通して、外部からの誘客促進も図っていく予定だという。今後の南知多町の発展を見守っていきたい。

【参考資料】

  1. 農林水産省  六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画等の認定について

  2. 南知多町  南知多ブランド「ミーナの恵み」

  3. 南知多町 ふるさと南知多応援寄付金


WEBライター 稲橋祐史

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